数年前パー5の13番。フェアウエイ右松の根本からの第2打。殆ど振れない状態で、3番をチョークダウン。ボールが飛び出した瞬間、パトロンの悲鳴が響く。十分でない高さで、向かう先には、横たわるクリーク。ミケルソンのセカンドは、彼としては、読み通りにキャリー。辛くもハザードを越え、グリーンを捉えた。
そこから絶妙のパットを沈め、3度目へ大きく前進した。
日本のテレビ解説者。彼らが異口同音にする。オーガスタの経験。具体的には、ナニなのか。私の説明。それは足裏の経験差なのだ。
確かに、昨年優勝のスピース。彼との経験の差は甚大。パトロンとの会話。アーメンコーーナー上空の風の読み。それ以上の差異、それはグリーンのアンデュレーション。それを、どれだけ把握しているか。
マキロイ、デイたちは兎も角、スピース辺りになると、回数、実績が違い過ぎる。その差はズバリ。足の裏の蓄積。足の裏は、第二の心臓と言われる。それほど重要な部分は、ゴルフにとっては、もう一つの頭脳なのだ。
約25年出場しているミケルソン。彼にはその蓄えが、他の大多数と、決定的に異なるほどある。その象徴的なホールが、パー5の13番。
それだけではない。その後の14、15、そして16番。ここでもグリーンの状態が、分かっている。だからミケルソンは、打つ前から、幾つもの選択肢を用意できる。これは実に大きな強みになる。
そのマスターズに向け、ミケルソンが、ヒューストンをプレーしている最中。タイガーの代理人シュタインバーグが、タイガーの欠場を発表した。4月1日。時あたかもエープリルフール。だが冗談でも何でもなかった。
「昨年末2度、腰にメスを入れた。この状態で十分なプレーを、見せることは困難。パトロンの皆さん以上に、タイガーは残念です」。
2年前の2014年。例の女性スキャンダルの影響で、欠場したばかり。マスターズでは、ミケルソンより多い、4度の優勝。それはニクラスの6度を、年齢的に抜く可能性を、期待させてきた。
正月明けの頃、私は別の出版物で、次のような話を書いている。
「どうやらタイガーが、本格的に動き出すのは、2016~2017年(要するにこの秋)になってから」。ゴルフばかりか、スポーツ全体にとって、最重要な身体部分が腰。そこへ都合3度(最初は数年前)、メスを入れたのだから、仕方ないことなのだ。
米ツアーだけで79回の優勝。世界ランク一位を合計683週記録した、稀代の大プレーヤー、タイガー・ウッズ。僅か40歳の若さで、引退のシナリオが見えてきた。決して過酷な読みとは、言えまい。
更に一方の一方のミケルソン、彼は目下平均ストローク首位。それも前週まで69.008。この時間ツアーの集計は出ていない。だが間違いなく68台に突入しているはず。この安定さは、強みだ。
アゼリアが咲き乱れる、深南部ジョージアの、オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ。世界中のファンが、心躍らす一週間は、米国時間7日開幕する。
(April.4th.2016)