マスターズ迄、あと6週。タイガーの準備加速

どうやら今季はノンビリ遣り、本格活動は2017年シーズンになりそうなタイガー。その間のキャデイ、ジョーの処遇は、どうなるのか。気がかりはその部分だ(courtesy of Global Golf Post)

どうやら今季はノンビリ遣り、本格活動は2017年シーズンになりそうなタイガー。その間のキャデイ、ジョーの処遇は、どうなるのか。気がかりはその部分だ(courtesy of Global Golf Post)

26歳マキロイが、生涯グランドスラム達成に必要な、グリーンジャケット。マスターズの開幕は4月7日。舞台のオーガスタ・ナショナル。1997年から主役を張って来たのが、他ならぬタイガー。熊ならぬ虎が冬眠から、いま覚めつつある。

ご存じの通り、タイガーは昨年後半、二度続けて腰にメスを入れた。その前2014年3月30日。この時も医師は「競技ゴルフ迄に、百日の安静が必要」だった。二度処置した事は、昨年9月の一回目も、成功しなかったと言うこと。

その2度目から日数を数えると、ほぼ百日が過ぎた。代理人マーク・スタインバーグが「2月に入り、パッティングそしてチッピングを開始。ここ数日ウエッジ、そして9番アイアンも打ち始めた」と説明する。

2月24日。半ズボンのタイガーが、まず目の前の、デジタルスクリーンに向かって打つ。パー3ホール。ボールはホールに4.5メートルの、バーディチャンスに付いた。

前出スタインバーグンは「タイガーのファンには、期待が持てる状態」と付け加える。ただし問題はその先。具体的な復帰プログラムは、一切決まっていないことだ。それはそうだ。未だ短いアイアンを、手にし始めただけ。この先ドライバー迄。そしてコースでの実戦の勘を取り戻す。その道程は、決して短くない。

歴代勝者だから、タイガー、マスターズは何時でも出場できる。ただしタイガーとして、パトロンを魅了出来る。それだけのゴルフが出来るか否か。結論としては悲観的だ。

復帰への長い登り坂を歩く。彼を支えている男がいる。キャデイのジョー・ラカバだ。かつてジョーは、フレッド・カプルスのバッグを、任されていた。そのカプルスが50歳になった時、ジョーに声を掛けたのが、ダスティン・ジョンソンだった。

ルールの解釈違いで罰打。2010年全米プロの優勝は逃した。それでもツアー通算9勝の実力。190センチ超の派手な長距離砲。キャデイとしては、最高のプロ。それがダスティン。稼ぎにしても、年間数千万円は固い。

安定した数シーズン。そんなジョーに、新たな要請が来る。それがタイガーだった。

かつてタイガーのキャデイは、問題発言の多いスティーブ・ウイリアムズ。彼を切ったタイガーが、声を掛けて来たのだ。年齢的にはタイガーより9歳若いダスティン。この先安定した収入は、より長く続けられる可能性。それでもジョーは、即座にダスティンに相談している。
「タイガーと仕事が出来る。素晴らしいこと。僕にとってジョーは不可欠。でも諸手を挙げて送り出すよ」。

これがこの時の、2人の遣り取り。程なくして、タイガーとジョーのコンビは、始動する。然し優勝どころか、その後タイガーは、禄にトーナメント活動さえ出来ていない。その揚げ句昨秋の、二度の処置。

タイガーは数少ない、自家用ジェット機所有者のカネ持ち。成績が上がらなくとも、或る一定額の保証はあるはず。それは並みのキャデイよりは上。とは言え、まともな神経なら、腐って当然かも知れない。だがジョーは、そんな焦りを、微塵も見せず。タイガーの復帰プログラムに付き合い、4月第一週開幕のマスターズを、遠謀している。

(Feb.29th.2016)

45歳2位6度。全米オープンの夢、依然追うレフティ

courtesy of PGATour.com

courtesy of PGATour.com

松山やスピースが生まれた時、この人は既に大学生。アマチュアで、ツアー優勝も飾っていた。そしていま前述2人の若手が主役を張る2016年シーズンも、この時期既にターゲットを、4月のオーガスタ。そして6月のオークモントに置いている。オークモントは、言わずもがな全米オープン。ミケルソンにとっては、見果てぬ夢を追う舞台だ。

最大164人が出場する、ゴルフ競技。それでも優勝と言うパイは一つ。ミケルソンがこの世界にデビューした頃は、ノーマン、ファルド、アーウイン達の世代。それがスチュアート、カプルス、タイガー達を経て、今いわゆるビッグ4。マキロイ、スピース、デイそしてファウラーの時代。

私、ジャンボ尾崎の時も、時折り引用する。これだけの成績。一般企業なら代表取締役社長の業績。それが息子ほど、歳の離れた若者と五分で接する。年齢を意識したら、到底できる事ではない。それでも直向きにバーディを追う。それを45歳ミケルソンは今季、既に2週演じている。

一度は彼にとっての、今季の緒戦パームスプリングス。この時は3位。それ以上に迫力を誇示したのが、2週前のペブルビーチだった。

3コースで開催される、Nationalプロアマ。スパイグラスヒルでの、第一ラウンドを丁寧に乗り切ると、金曜以降の2コース(モントレーペニンシュラとペブル)もバーディを積み重ね通算16アンダー。単独首位で最終日。5度目の優勝は目前の状態だった。

だが日曜日延びない。それでも海に打ち出す強いホール17番で、乾坤一擲のバーディ。最終日だけで7アンダーの大まくりで終了していた、テイラーの17アンダーに並ぶ機会。だが18番で、短いバーディパットが沈まず、万事休した。これがこの時の写真だ。

続くリビエラ(ノーザントラスト)は、過去複数優勝している、相性のいいコース。「三度目の正直」を狙って、不思議でない状況。だがミケルソンは、一顧だにすることもなく、自家用機の方向を、東に向けている。彼にとっては目の前の、並みのトーナメントの一勝でなく、四大競技での勲章。ことに全米オープンのタイトルの必要。それがひしひしと伝わる決断だった。

ペブルでの最終日。スイングはほぼプレーンに添って振られていた。パッティングも筆者の目には、安定して見えた。それでもマスターズも全米オープンも、取りこぼしは許されない。それを承知しているのが、当のミケルソンなのだ。

不思議なこと。ツアー全体で42度の優勝を重ねた、これほどのプロが、全米オープンだけに手が届かず。2位に終わった回数が、何と6度もあることだ。

それだけに、数ヶ月先に待ち受ける、連続の大一番。そこで息子ほど年齢の違う、スピース達とたった一つのパイを奪い合う。ミケルソンが目下高めている集中力。常人には考えが及ばない、高さであることは、間違いない。

(Feb.22.2016 )

百ヤード迄。余分な処は、芝を張らない合理性と節約。日本でも是非…

フェニックス・オープン(英語の名称はWaste Management Phoenix Open)の会場でも、この様に、各種のサボテンが目立った。因みにここはwaste bunkerだから、ソールしても構わない(Gary Cruzの写真)

フェニックス・オープン(英語の名称はWaste Management Phoenix Open)の会場でも、この様に、各種のサボテンが目立った。因みにここはwaste bunkerだから、ソールしても構わない(Gary Cruzの写真)

日本のテレビ桟敷で、何人が気が付いたか。松山が優勝したフェニックス。2つの意味で英語のWasteが付いていた。一つは冠スポンサーが廃棄物処理企業。もう一つ。フェアウエイを外れたボールは、自然の荒れ地に転がる。そこは元来砂漠だった未開地。それを現地ではwaste bunkerと呼ぶ。遊休地である。

アリゾナのゴルフは、競技でない時、15本のクラブが許される。それは通称ロックアイアン。ジャンクショップで1、2ドルの代物。芝地を外れたらこのクラブで脱出する。傷つくことを、心配しないで済むし、バンカーではないから、ここではソールしても構わない。ところ変われば、ゴルフも変わるモノ。

アリゾナのゴルフが注目されたのは、80年代に入ってから。ニクラス設計のデザートハイランドなど。多種サボテン生い茂るコース。そこでパーマー、ニクラス、プレーヤーそしてワトソンのテレビマッチ。寒さが本格化する感謝祭の週。避寒地から北米全域にゴルフを、映像で送る。それで受けた。ただし驚きは,他にもあった。それはコースそのものだった。

「水の使用量を、極力抑える」「元来あった樹木草を、可能な限り元の状態で残す」。

その為、まずティグラウンドから百ヤード以上、芝を植えない。ニクラス曰く。「百ヤード飛ばないゴルファーはいまい」。そこからグリーン迄は、普通のコースと同じ状態。私も何度もラウンドしたが、不便さも違和感もない。そこで直感したこと。それが日本オープン開催コースのラフだった。

何十年になるか、日本オープンのコースと言えば、ラフを目一杯延ばす。開催は秋10月。それ迄一夏要して延ばす。

従ってその半年、一般ゴルファーは、深いラフと格闘。球探しに苦労する。JGAはそれを自慢げに眺めていた。何と言う時代遅れ。コースの難度を上げる、その為にはグリーン周辺の斜面をつるつるにする。これは豪州のスタイル。深いラフの最悪は、2011年の日本女子オープンだった。名古屋の和合。決して長くないコース。ここで優勝スコアが二桁のオーバーパーになった。女子とは言え、日本オープンに駒を進める程の腕が、時に3度打っても、ラフに留まっていた。

「これはゴルフに非ず。単なる虐め」と、多くがテレビのチャンネルを替えた程。ここでニクラスの発想が、生きることになる。百五十ヤード前後までは、ラフを延ばそうがプロには無関係、一方でその間のラフが並みなら、日本オープンまでの半年、アマチュアゴルファーは、通常のゴルフを楽しめる。

2009年の日本オープン(武蔵)。メディアデイ、この時うちのスタッフの独身女性。毎ホール球探し、時には二桁。処がパー3はワンオンがあり、パーも取れた。この時私は「日本オープン即長いラフ」の時代遅れを実感した。そして長いこと体験してきた、アリゾナのウエストバンカーを、ここでも脳裏に重い浮かべた。これがその絵。アリゾナのアナウンサー、ゲイリー・クルツが撮影したモノ。

今年の日本オープンは10月埼玉。延ばすにしても、未だ先のこと。延ばせば延ばすだけ、管理費も嵩む。.JGAはこの際、頭をしっかり切り換えるべきだ。それ越前の三方得に、なるのだから。

(Feb.15.2016)

熱狂16番の変遷。収益40億円超、経済効果百億円

Gary Cruz,Thanks for your good imformation.Our readers love them all

Gary Cruz,Thanks for your good imformation.Our readers love them all

Super Bowlは、いわゆるオバケイベント。MLBのワールドシリーズは全7戦。それに対しスーパーボウルは、泣いても笑っても一試合。全米はおろか、世界中にテレビ中継。それが強さで、CBSの広告は、30秒スポットで5百万ドルと言うから、約6億円。

ただしこの巨大イベントに、立ち向かうとなると、並大抵ではない。だが人間の知恵に、限界はない。それが終わったばかりの、フェニックスOpen。今でこそ日本のファンにも馴染みになった。そしてPar3の一ホールで、早朝から数万が押し掛ける。それは優勝争いに匹敵する、巨大な熱狂を産む。

フェニックスは、米でも古い歴史を持つ。マスターズより、早く産声を上げている。当初は市内のフェニックスCC。私が取材を始めた80年代序盤。既にスーパーボウルの裏番組。表彰式後広大なテントのラウンジ。そこでプロ、キャデイ、クラブの会員達が、飲みながら声援を送った。現在のTPCスコッツデールへ移ったのは1987年。

当時ダイのTPCソウグラスが注目を浴びる。同じスタジアム型でも、砂漠のそれは桁が違った。バックナインの見晴らしのよい場所に、飲食のできる簡易レストランを、可能な限り建てる。そこを丸ごと企業に売る。観戦を楽しみながら、客を接待する。午前10時には熱狂が始まる。そのための簡易トイレが、驚くなかれ千百個。

多くの観客は、池を挟んだ簡易レストランで、終盤の熱戦を楽しめる

多くの観客は、池を挟んだ簡易レストランで、終盤の熱戦を楽しめる

終わっても直ぐには帰宅しない。コースと広大な駐車場。その一角に巨大なテント張りが六、七つ。ステージのナマ演奏を聞きながら、ここでも飲み熱狂する。閉店は一応10時。不思議なこと。それでいて交通事故の話を聞かない。

そんなことだから、会場は月曜日でさえ数万人。その結果土曜日一日で20万1003人。土曜日までの合計が55万3035人。いま最終発表を待つ時点で「史上初の、60万人が実現するはず」。その結果としての収益。それは少なく見積もっても40億円超。それらは高額賞金やテレビ中継料を含めた資金に回され、残りは近隣の中高校に寄付される。

何故そんなにカネが産まれるのか。それは全体が住民の奉仕で、成り立っているためだ。核になるのはサンダーバード。いわゆる青年商工会議所。会員は40人。40歳になると後輩に道を譲る。このフェニックスオープンだけではない。ミケルソンの出身校ASU(アリゾナ州立大)がホストする大学のゴルフ招待競技、サンダーバード・クラシックも、スコア集計など裏方は、すべてサンダーバードの奉仕で行われる。

競技者への、距離の近さと足場の良さ。これが観客を,より熱狂させる。日本のツアーは,明日にも参考にすべきだ(courtesy of pgatour.com)

競技者への、距離の近さと足場の良さ。これが観客を,より熱狂させる。日本のツアーは,明日にも参考にすべきだ(courtesy of pgatour.com)

昔ミケルソンが4年の時、私は監督として丸山茂樹たち、日大を率いて出場している。至れり尽くせりの持て成し。3ラウンドのゴルフからバッフェまで無料。それでいて要望されたことは一つ。「日本に戻ったら、サンダーバード宛てに、簡単な礼状を」。それだけだった。

話は前後するが、北米大陸には、サンダーバードでなく、スノーバードと言う言葉がある。米北部やカナダは雪が深く寒さも厳しい。主にリタイアードは、トレーラーハウスを牽引。アリゾナ、パームスプリングスなどで数ヶ月過ごす。自分たちのゴルフや食事だけでなく、男女プロのトーナメントも楽しむ。それらが何れも廉価なのだ。

そんなことでフェニックスオープンの前後はスノーバードが集まる。彼らが落とすカネは、一週間で百億円を超す。その象徴がスコッツデールの16番。オバケイベントの裏番組は、気が付いた時スーパーボウルに負けない巨大さに化けていた。

昨季日本男子の観客数は約56万。勿論一年の合計。フェニックスの7日間にも及ばない。日本のファンは、16番の熱狂に感心するだけでなく、フェニックスの過ぎ去った数十年を、追跡すべきだと思う。

(Feb.8.2016)

PING cross over、アイアンで280ヤード飛ばす

この絵の通り、外観はアイアン。それでバッバは「280.1ヤード」先へボールを落とした。メーカーの開発能力は、大変なモノだ

この絵の通り、外観はアイアン。それでバッバは「280.1ヤード」先へボールを落とした。メーカーの開発能力は、大変なモノだ

世界を制した、あのPING Eye 2の、ドライビングアイアンが、思い起こされる。

私が渡米したのは、遠く79年9月。これから世界への、人脈を開拓する時。平日は何でもいいから取材。週末は米ツアーの中継をテレビ観戦。その後アパートに近い公営コースへ。地元民に混じり、日没まで薄暮の割引ゴルフ。

値段の安さ。潜りゴルファーの存在。それらと共に驚いたこと。それは何処も、4つのパー3の一つか二つが、230前後だったこと。私は自動的に3Wかドライバー。そのホールで向こうの連中、アイアンで打ち、時にグリーンをオーバーする。

「ナンだ、こいつら化け物」度肝を抜かれた。

デービス・ラブ三世は、プロデビューの頃から取材した仲。当時の彼は2アイアンで、280を正確に打っていた。

その当時プロばかりかトップアマ。彼らに目立ったのは、ドライビングアイアンの存在だった。彼らのバッグに、ウッドはドライバーだけ。その隣で1番アイアン。いわゆるドライビング・アイアンが、幅を利かせていた。

私には手の届かない存在。或る時こんな遣り取りがあった。オハイオ州立大のゴルフ場。ニクラスが学んだコース。当時監督支配人ヘッドプロ三役はジム・ブラウン。帝王のお膝元だけに、ジムのクラブはマグレガー。処がその中に一本だけ、別のメーカーが混じっていた。それがPING Eye2のドライビング・アイアンだった。

「デューク、これ写真、撮らないでくれ」。ジムの焦った顔付き。マグレガーと契約している、ニクラスの後輩でさえ、当時PING Eye2ドライビング・アイアンの魅力を、断ち切れなかったのだ。

日本人の私には、打ちこなせないドライビング・アイアン。その伝統が今年PINGの新製品として登場した。それが
cross over。この一月発表された、新アイディアのドライバーを押しのけ、私が着目した新製品。形はこの写真だからアイアン。説明は、こう書かれている。

「ヘッド速度と、ミスを救ってくれる(forTR1966_ANSER_FACEgivenness) はハイブリッドの能力。それに対しコントロールと、それに伴う能力はアイアン、との説明。早速テストしたバッバ・ワトソンが、初スイングで「280.1ヤード」とニンマリした。

更にバッバに、メイハンやリングマスが加わり、1月中フロリダで、繰り返しテストを実施。「僕たちプロが気に入るのだから、アマチュアのユーザー二も、役立つはず」とメイハン。

この辺り、ウッド以上にロングアイアンを好む、欧米の上級ゴルファー。彼らの伝統が、しっかり受け継がれていることが分かる。

もう一つは、創業者、カーステンの、ミスを救ってくれる着想。それはトゥーヒール・バランスのPINGパターから、キャビティのアイアン迄。その後世界の全メーカーが真似した。その基本は現在でも不変。それを証明する目的もあり、PINGはTR1966パター(写真)を、1月25日世界の市場に出した。50年前の用具が、21世紀の現在も注目される。

Cross overとTR1966パター。ゴルフ愛好者は、春が待ち遠しい。

(Feb.1st.2016)