英樹、メモリアルV2へ、メディアDayこなす

メディアDayの記者会見で、てきぱきと答える英樹(All photos courtesy of The Memorial Tournament)

メディアDayの記者会見で、てきぱきと答える英樹(All photos courtesy of The Memorial Tournament)

前年の優勝者が列席しての、メデイアDay。米ツアーでは、男女とも長いこと、行われている。

似たような催しを、日本に探すと、その一つは大相撲の御免祝い。ゴルフのメディアDayは、そこに前年の優勝者が顔を出す。その分賑やかになる。

早いもので、松山英樹がメモリアルで、米ツアー初優勝して一年が経つ。先週火曜19日、オハイオ州コロンバス郊外のミュアフィールド・ビッレッジGCに、多くの報道陣を招き、そのメディアDayが催された。

日本人の米ツアー優勝は、2004年の丸山茂樹以来のこと。それだけに、片山総領事をはじめ、コロンバス日米協会の関係者も駆け付けるなど、大いに盛り上がった。

トーナメント・ディレクター、ダン・サリバンの司会でスタート。多くの質問が飛ぶ中、英樹は「ここは他に比べ、フェアウエイが少し広いように受け止める。一方でここはグリーンを狙うショットの、高い精度が求められる。それはボクの長所。それを活かして、ミスター・ニクラスの前で、また好成績を上げたい」と強い抱負を語った。

一年前、ニクラスからトロフイを渡された英樹。この時の感激が、19日蘇った

一年前、ニクラスからトロフイを渡された英樹。この時の感激が、19日蘇った

メモリアルは今年が、四十回目の大会になる。競技者として絶頂期にあった35歳の時。ニクラスはこのツアー競技を立ち上げた。目的は世界のゴルフ史を飾った功労者を顕彰。それらをコース一角の、記念敷地に残すことだった。

トーナメント名は功労者への記念と、米の戦没者記念日(Memorial Day)双方を意味するモノ。そのため期日も、この時期が選ばれた。一方のコースの名前は、彼が全英オープン初優勝した、スコットランドのミュアフィールドから拝領。第一回目の顕彰者は、言わずもがな、マスターズの創始者ボビー・ジョーンズだった。

この時競技は、アーウインとロジャー・モルトビイのプレーオフ。実力的に、アーウインが押していた。処がギャラリー席に曲がったはずのボールが、小さな看板に当たり、グリーンに載るハプニング。これで決着が就いた。

ちなみにモルトビイは、NBCのラウンド解説者として、ジョニー・ミラーと絶妙のコンビが、20年以上人気を博している。

如何にも米ツアーらしい、軽妙闊達な記者会見

如何にも米ツアーらしい、軽妙闊達な記者会見

そして第二回目の77年と84年。創始者とホストとプロ。三足の草鞋を履きながら、二度の優勝を成し遂げている。そのニクラスが目標としたもの。それは「北のマスターズ」だった。深南部ジョージアで開催されるマスターズ。それに匹敵する格調の高い招待競技。

そのメモリアル。英樹の連続優勝は当然の期待。一方でタイガー、ミケルそん達ベテラン。そしてザ・プレーヤーズの派手な優勝で、一躍脚光を浴びたファウラーも、出場をコミットしている。英樹の連覇は、決して生易しくない。

さて40年前、ジョーンズで始まったメモリアル・トーナメント。今年の顕彰者Honoreeは、Sirの称号を持つニック・ファルド。

彼はマスターズと全英オープンで、それぞれ3度優勝。引退後は米CBSとゴルフチャンネルの解説。一方で将来プロのレベルでのゴルフを目指す、12歳から21歳までを対象にした、ファルドシリーズ。これを欧州、アジアを中心に世界で展開している。

そのセレモニーは、水曜午後にある。このとき英樹は、是非ファルドの話を拝聴したらよい。競技者としてだけでなく、人間としての、引き出しを大きくするためにも。

(May.25.2015)

全米学生まで、テレビ放送される、日本との違い

これは2012年、地区予選を優勝で突破した時の写真。左がDirector of GolfのPuggy Blackmon。この様なスコアボードの前で、競技者も観戦者も、一喜一憂する。今週のNCAA全国大会のスコアボードは、この十倍以上大きい

これは2012年、地区予選を優勝で突破した時の写真。左がDirector of GolfのPuggy Blackmon。この様なスコアボードの前で、競技者も観戦者も、一喜一憂する。今週のNCAA全国大会のスコアボードは、この十倍以上大きい

四月のマスターズで、一躍歴史を作ったジョーダン・スピース。未だ21歳。数年前まで彼は、テキサス大の学生だった。タイガーの稼ぎに影響され、最近は中退し、プロ転向する数が増えている。

ただしタイガーやジョーダンは例外。多くは四年間大学で学び、その後でQSに挑む。奨学金もある。アマチュアのタイトルを,積み重ねることも、プロ転向後の将来に,役立つからだ。

そんな学生にとって、年間最大の競技。それが通称NCAAの全米学生選手権。これは「明日のスターの宝庫」。遠く1980年。はじめて取材した時。この時の主役はカプルス、オメーラ、ハル・サットン。ジョン・クック、86年の全米プロを獲ったトウエイたち。まさにきら星だった。

その全米学生が始まる。場所はフロリダ州コンセッションGC。今週が女子。それに続き、来週男子が行われる。優勝争いへの興味。それ以上のもの。それは〔日本では相手にされない)学生の競技が、テレビで放送されることだ。

日に焼けた脚に、白い短パンがよく似合う

日に焼けた脚に、白い短パンがよく似合う

大学が大都市に集中している日本と違い、米の大学は全米50州に分散している。従ってその分、地域対抗意識が強く、それが大学スポーツを、収益的にも巨大なビジネスに押し上げている。その中でもフットボールとバスケ。この二つはプロに匹敵する人気。

ゴルフは競技の形態からして、そこ迄の熱狂は呼べない。とは言え各大学の、中心的な部活。それをゴルフチャンネルが、しっかり放送する。それがプロツアー人気の、下支えになっているのだ。勿論NCAAだけではない。全米アマチュア選手権。これは昨年まではNBC。今年からはFOXが放送する。

翻って日本の、アマチュアゴルフとテレビの関係。むかし石川遼が15歳だった時、一度だけフジテレビが放送した。ただしそれはゴルフと言うより、アイドル追っ掛け番組。それでも日本ゴルフ協会としては、これを気にアマチュアのゴルフ放送に、乗り出すべきだったが、そんな高尚な考えは、持ち合わせていなかった。

それ以前の問題。日本では大学のトーナメントに、応援さえ許可しない。数住人の部員。その中で選手になれるのは一握。だが練習は一年間。全員で続ける。その自分達の代表を、コースで応援することさえ「NO」。それが遅れた日本の実情なのだ。

日本の早稲田に似た色。これがサウスカロライナ大のスクールカラー。各校地域の歴史に関連する色を、巧みに使用している

日本の早稲田に似た色。これがサウスカロライナ大のスクールカラー。 各校地域の歴史に関連する色を、巧みに使用している

それより何より日本の大学ゴルフ。昨年はスコアの改ざんまで起こっている。「そんなことも応援が入ることで,必然的に防げます」と大学の監督。テレビ放送されれば、それは不正防止にも、役立つことになる。

全米で1万7千コース。プロ(PGAオブAmerica)の数、約2万5千人。とは言えゴルフ産業を支えるのは,カネを払って遊ぶアマチュアの大衆。全米アマチュアと共にNCAAは、その頂点。それをテレビで観戦できたら楽しい。

昔のニクラスから、いまのスピースの活躍まで。この柔軟な発想があればこそなのだ。
(May.18.2015)

WGCマッチプレーの進化に拍手喝采

今年の海外ツアーを牽引する若い2人。マキロイ〔右)とスピース。「彼らはパーマー、ニクラスの宿敵関係になれるか?」米Global Golf Postの期待は大きく膨らむ

今年の海外ツアーを牽引する若い2人。マキロイ〔右)とスピース。「彼らはパーマー、ニクラスの宿敵関係になれるか?」米Global Golf Postの期待は大きく膨らむ

「マッチプレーは、テレビ時代の現代には不向き」。これが定説だった。

かつて日本でも、プロマッチプレー選手権が、実施されていた。だが最終日は、決勝と3位決定戦の2試合だけ。一戦ごとの勝ち上がりだから、テレビ桟敷が期待する、顔触れがなかなか揃わない。そんなことで、何時しか消えた。

1999年に始まった、WGCのマッチプレー選手権。2003、2004年に、タイガーが連覇する迄は、ジェフ・マガートや、ケビン・サザーランド達。スターとは言えない、優勝者が続いた。

それ迄のアクセンチュアから、キャデラックに代わった今回。競技のフォーマットを、大きく変えた。かつて64人の勝ち上がり戦は、一つ落とせば、その競技者は、会場を後にした。

それに対し、今回からは64人全員が、3試合の予選ラウンドをする。そのため水曜日から熱狂。ブラッドレーとヒメネスの口論。それがテレビ画面に捉えられる。そんなハプニングも、ファンの興味を高めた。

その結果で、上位16人が、勝ち上がり戦(ノックアウト戦)に突入。その初っ端で、松山英樹が世界ランク一位のマキロイと激突したことで、日本でも特に注目された。

ただし此処で特筆したいこと。それは松山が、マキロイに子供扱いされた結果ではない。フォーマットを此処まで進化させ、ショーアップした、米ツアーの能力。それに対し拍手を、送りたいことだ。

タイガー、ミケルソンガ欠場した今回、金看板はマキロイとスピース。後者は英国のベテラン、ウエストウッドに敗れ決勝進出を逃した。一方で松山を下したマキロイ。彼は準々決勝でも、追い上げて延長戦に持ち込む粘り。大本命の活躍は、観客そしてテレビ桟敷の関心を、最終日まで繋いだ。

これがフォーマット変更の、最大の進化部分。ショーとしてのスポーツは、客に見て貰ってこそのもの。さらに幾つかの、客観的要素が加わった。会場のハーディングパークは、サンフランシスコ。金門橋からも近い。英国のローズ達は、ケーブルカーに乗り、名所フィッシャーマンズワーフを観光。

ジョーダンを破りながらも、最終日まで残れなかったウエストウッド。彼には更に素敵なハプニングが待っていた。シスコからベガスはひとっ飛び。そこで日曜日パッキャオvsメイウエザーのタイトルマッチ。この切符を持っていたマキロイ。だが時間的に観戦不可能に。そこで代わってベガスへ飛んだのがウエストウッド。当然のことながら、チャーター機。

マキロイは優勝杯を。英国の先輩は、ベガスの興奮を。それぞれに最大限、満喫した。

日本とは比較しようないこと。とは言え一つのイベントに、他のショーが絡む。それで話題性が、二倍にも三倍にもなる。実に巧みなフォーマットの進化だった。人間の知恵とは、それにしても大したものである。
(May 11.2015)