贔屓で言うのではない。だが米ツアーの仕事は、実に手際良い。何事も消費者が「欲しい」と思った時には、品物が出て来る。その一つが、この一年(2013年から2014年)の、難度の高いコース10傑。最終のツアー選手権は、30人(実質的には29人)。それが始まった週、この数字が出てきている。
それは単に、プロ達の話題ではない。ツアーの開催コースは、一般ゴルファーにとっても、憧れの場所。そこで世界をリードする、米ツアーのトッププロが、どの様な結果を出しているか。それは全米1万7千ゴルフ場。そこで遊ぶアマチュアが、直接間接関連するデータ。何しろ欧米には「あわよくば、プロを負かしてやろう」との野心満々のゴルファーは少なくないのだから。
そんな環境の中、トップ10が次のように発表された。それは設定されたパーに対する、プロ達のスコアの平均。
一位、パインハーストNo.2コース。パーに対しての平均、3.076オーバー。
二位。オーガスタ・ナショナルGC。1.946オーバー。
三位。トランプ・ナショナル・ドラール(ブルー)。1.852。
四位。トーリーパインズ南。1.797。
五位。コングレッショナル(ブルー)。1.546。
六位。イニスブルック。1.433。
七位。ペブルビーチ。1.384。
八位。TPCサンアントニオ。1.286。
九位。ハーバータウンGL。1.038。
十位。ロイヤル・リバプール。0.767。
繰り返すが、これらの数字は、何れもオーバーパーである。その中で、意外な結果の一つ。それは全英オープン会場、ホイレーク(ロイヤル・リバプール)が、10位だったこと。これには言い訳がある。
全英オープンと言えば、冷たい風と、横殴りの雨。それが一般的な印象。だが地球温暖化の所為もあり、今年の第一ラウンド。それは殆ど南加州の様な、好天と暖かさだった。風が吹かなければ、全英オープンの象徴、ポットバンカーも恐くない。その結果、第一ラウンド。大きなアンダーが続出。日本人プロも、その多くが上位に顔を出した。尤も最終的には、勝者マキロイも、傘を差してのプレーになるのだが。何れにしろ木曜日の好天が理由で、難コースのランクで、10位に留まった。
2位のオーガスタ・ナショナル以下は、パーに対するオーバーが、1台。ちなみにオーガスタの場合、1.946。それを大きく引き離したのが、ノースカロライナ州のパインハーストNo.2コース。説明する迄もなく、6月の全米オープンの舞台だ。
今年の全米オープンを前に、コースは大々的に改造された。担当したのは、クレンショウ、ビル・クーアの、売れっ子コンビ。彼らの得意の一つは、フェアウエイの左右に、砂地を多く設けること。加えて今回は、その砂地に地元の雑草(針金のように強靱なワイアグラス)を、植樹した。これは随所で、スコアメークを、困難にした。その結果、72ホールでのアンダーパーは、僅か3人。優勝したカイマー(9アンダー)。そして2位の二人(コンプトンとファウラー)が1アンダーだった。
メジャー競技の優勝者は、歴史に名前が残る。特に勝ってからの一年。何処へ出ても「Our National Open Winner」と、紹介される。スポーツヒーローでも、そこ迄尊敬の対象になる彼ら。その様な歴史があるだけに、メジャー競技の会場。そして並み居る世界の強豪でさえ、3人しかアンダーを出せなかった。その様なコースへは、多くの腕自慢が、挑戦することになる。
秋のいま、ノースカロライナは、ゴルフシーズン真っ盛り。料金もNo.2コース(全体で8コース在る)は450ドルと高額。それでも全米オープンの余韻が残る中。多くの一般ゴルファーが、ラウンドを楽しんでいる。プライベートクラブの、オーガスタ(2位)は、大衆には手が出ない。だが全米オープンのパインハーストは、問題なくティタイムが取れる。
トップ10の中。ドラール、トーリーパインズ、ペブルビーチ、ハーバータウンも、同様パブリックに、オープンしている。従って多くのアマチュアが、ここでもプロのスコアに、挑むことが可能になる。これは大衆ゴルファーを、刺激し上達させる上で、何よりの切っ掛けになる。
その中、取りわけハーバータウン。ここは18番グリーン奥の、灯台がLandmark。要するに海に面した、湿地帯に造られたコース。だから時折、とんでもない低気圧が通過する。そんな日は、プロでもパーを維持することが、精一杯になる。
それらの情報が、シーズン終了と同時に、公開される。この迅速さと豊かなバラエティ。私たち、ゴルフ好きの消費者には、実に有り難いデータなのだ。
(Sep.29.2014)