熱狂16番の変遷。収益40億円超、経済効果百億円

Gary Cruz,Thanks for your good imformation.Our readers love them all

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Super Bowlは、いわゆるオバケイベント。MLBのワールドシリーズは全7戦。それに対しスーパーボウルは、泣いても笑っても一試合。全米はおろか、世界中にテレビ中継。それが強さで、CBSの広告は、30秒スポットで5百万ドルと言うから、約6億円。

ただしこの巨大イベントに、立ち向かうとなると、並大抵ではない。だが人間の知恵に、限界はない。それが終わったばかりの、フェニックスOpen。今でこそ日本のファンにも馴染みになった。そしてPar3の一ホールで、早朝から数万が押し掛ける。それは優勝争いに匹敵する、巨大な熱狂を産む。

フェニックスは、米でも古い歴史を持つ。マスターズより、早く産声を上げている。当初は市内のフェニックスCC。私が取材を始めた80年代序盤。既にスーパーボウルの裏番組。表彰式後広大なテントのラウンジ。そこでプロ、キャデイ、クラブの会員達が、飲みながら声援を送った。現在のTPCスコッツデールへ移ったのは1987年。

当時ダイのTPCソウグラスが注目を浴びる。同じスタジアム型でも、砂漠のそれは桁が違った。バックナインの見晴らしのよい場所に、飲食のできる簡易レストランを、可能な限り建てる。そこを丸ごと企業に売る。観戦を楽しみながら、客を接待する。午前10時には熱狂が始まる。そのための簡易トイレが、驚くなかれ千百個。

多くの観客は、池を挟んだ簡易レストランで、終盤の熱戦を楽しめる

多くの観客は、池を挟んだ簡易レストランで、終盤の熱戦を楽しめる

終わっても直ぐには帰宅しない。コースと広大な駐車場。その一角に巨大なテント張りが六、七つ。ステージのナマ演奏を聞きながら、ここでも飲み熱狂する。閉店は一応10時。不思議なこと。それでいて交通事故の話を聞かない。

そんなことだから、会場は月曜日でさえ数万人。その結果土曜日一日で20万1003人。土曜日までの合計が55万3035人。いま最終発表を待つ時点で「史上初の、60万人が実現するはず」。その結果としての収益。それは少なく見積もっても40億円超。それらは高額賞金やテレビ中継料を含めた資金に回され、残りは近隣の中高校に寄付される。

何故そんなにカネが産まれるのか。それは全体が住民の奉仕で、成り立っているためだ。核になるのはサンダーバード。いわゆる青年商工会議所。会員は40人。40歳になると後輩に道を譲る。このフェニックスオープンだけではない。ミケルソンの出身校ASU(アリゾナ州立大)がホストする大学のゴルフ招待競技、サンダーバード・クラシックも、スコア集計など裏方は、すべてサンダーバードの奉仕で行われる。

競技者への、距離の近さと足場の良さ。これが観客を,より熱狂させる。日本のツアーは,明日にも参考にすべきだ(courtesy of pgatour.com)

競技者への、距離の近さと足場の良さ。これが観客を,より熱狂させる。日本のツアーは,明日にも参考にすべきだ(courtesy of pgatour.com)

昔ミケルソンが4年の時、私は監督として丸山茂樹たち、日大を率いて出場している。至れり尽くせりの持て成し。3ラウンドのゴルフからバッフェまで無料。それでいて要望されたことは一つ。「日本に戻ったら、サンダーバード宛てに、簡単な礼状を」。それだけだった。

話は前後するが、北米大陸には、サンダーバードでなく、スノーバードと言う言葉がある。米北部やカナダは雪が深く寒さも厳しい。主にリタイアードは、トレーラーハウスを牽引。アリゾナ、パームスプリングスなどで数ヶ月過ごす。自分たちのゴルフや食事だけでなく、男女プロのトーナメントも楽しむ。それらが何れも廉価なのだ。

そんなことでフェニックスオープンの前後はスノーバードが集まる。彼らが落とすカネは、一週間で百億円を超す。その象徴がスコッツデールの16番。オバケイベントの裏番組は、気が付いた時スーパーボウルに負けない巨大さに化けていた。

昨季日本男子の観客数は約56万。勿論一年の合計。フェニックスの7日間にも及ばない。日本のファンは、16番の熱狂に感心するだけでなく、フェニックスの過ぎ去った数十年を、追跡すべきだと思う。

(Feb.8.2016)