先週末の感謝祭の休日。52年前の映像を楽しむ

 感謝祭のディナーを差配するバーバラを、、頼もしく見守る夫ジャックと5人の子供たち。家族愛が溢れる、素晴らしい光景だ

感謝祭のディナーを差配するバーバラを、、頼もしく見守る夫ジャックと5人の子供たち。家族愛が溢れる、素晴らしい光景だ

先週末は感謝祭。多くの米国の仲間が、祝いのメッセージ。そして写真他を交わしていた。

facebookも例外ではなく、ニクラスの処からも、2枚の写真とコメントが添付された。

一枚は1979年、感謝祭夕食の光景。長男ジャッキーと、次男スティーブン。2人は随分大人びているが、ゲイリーと末っ子マイケルは、未だ子供々々している。

ニクラスの口癖。それは「プロとしての18箇のメジャータイトル。これは前人未踏の記録であり、誇らしいモノ。だが私にとって生涯の幸運。それはバーバラと出会え、5人の子供に恵まれたこと」。

その結果の22人の孫。10月も半日仕事先で、一緒に過ごしたが、家族の話をする時のニクラスは、目を細め、途端に好々爺に変身する。

1979年。ニクラスにとって実は、良くない年だった。オハイオ州立大を2年で中退。その後1962年全米オープンで、ツアー初優勝。以来17年続けていた、毎シーズン優勝の記録が、途絶えた時だったのだ。

それを切っ掛けに、一部プレースタイルばかりか、体型や髪型も変えた。それまでOhio fat(オハイオのデブ)と野次られた体型をスリムに。またGIカットを長髪にも変形した。そして翌80年、バルタスロルの全米オープン。ここで「Jack is back!!」を果たすのだが、感謝祭はその7ヶ月も前のこと。言わばどん底状態での、家族7人での感謝祭の夕食。然し和やかさは、少しも失われていなかった。

先週の感謝祭週末。米のFOXテレビがオンエアしたのは、1962年全米オープンの映像。ニクラスの話に拠ると「USGAが管理しているアーカイブ」だそうである。それはニクラスの、メジャータイトル18箇の、第一歩が踏み出された時のもの。相手は”King”パーマー。舞台は彼の本拠地、ペンシルベニア州オークモント。州境を持つが片方は、フィラデルフィアの在る東部。一方のオハイオは中西部。いわゆる田舎。然もニクラスは、パーマーより11歳下。その若造が憎たらしいほど強い。

72ホールは283のタイ。翌日18ホールで、行われたプレーオフは、ニクラスが勝利した。それもKingの本拠地で。米ばかりか、海外のゴルフ界では、永遠に語り継がれる、名勝負の一つ。半世紀以上が過ぎても、多くが記憶するその場面。加えて感謝祭週末は、苦しかった開拓時代を思い起こし、歴史に感謝する時。だから七面鳥料理を食べる。その後父と息子が、庭の芝の上で、フットボールを投げ合い、絆を確かめ合う。その時間帯。午後3時からの放送。家族で楽しむテレビ番組として、ニクラス、パーマーの熱戦は、打って付けだった。

 FOXテレビで放送された、1962年全米オープンの映像。52年が過ぎても、迫力は色褪せて居なかった

FOXテレビで放送された、1962年全米オープンの映像。52年が過ぎても、迫力は色褪せて居なかった

1962年と言えば、東京五輪の2年前。映像は勿論モノクロ。歴史を回顧し楽しむためには、またとない機会。

翻って日本のテレビ。一部マスターズの再放送が視られる。だが多くの場合、正月のゴルフ番組と言えば、いま売れているプロを、お笑いタレント。彼らと組み合わせただけの、バラエテイ番組しか出てこない。昨年だったかは石川遼と、とんねるずの組み合わせ。これは明らかに、送り手側の発想が、貧弱安易過ぎることの結果。そんな体たらくを続けているから、シーズン中のトーナメント中継。その数字(視聴率)が、どん底目指して、落ち続けて行く。自業自得なのだ。

テレビの視聴率。今季これ迄のものが、手許に届いている。何れも3%前後の厳しい数字。「せめて女子プロとの合計で、10%に届くと」。そんなため息が聞こえる。然し日本のプロゴルフの、テレビ視聴率が回復する期待。それはほぼゼロ。それはツアーの組織や、テレビ局が、目先の0.1%の数字に、自転車操業している。その結果長期的なスパンで、全体を見渡す能力が、欠落するからだ。

1962年の全米オープンに匹敵する名勝負。それは日本にも残っている。例えば1988年、そして1989年の日本オープン。ジャンボ尾崎が、連覇した時のもの。双方とも大詰めにドラマがあった。その場面を思い起こすだけでも、1千万ゴルフ好きは、わくわくするはず。四半世紀も昔の映像だけに、若い世代には、それぞれに新鮮な情報にもなる。

米の感謝祭からクリスマス迄は、日本の正月と同じ。その時これらを茶の間に届けることで、歴史を掘り起こす役割も担える。まさに一石二鳥。場合によっては、ニクラスやパーマーの、全米オープンの映像でもいい。

そこでカギを握るのは、制作する側の知識。米英では高がゴルフでも、歴史家historianが活躍する。その影響もあり、週末パブリックコースで遊ぶ大衆ゴルファー。彼らでもジョーンズ、へーゲン、サラゼン達の、故事来歴に関する雑学も豊富だ。それはテレビ等の報道機関が、根気よく丁寧に情報を、送り続けているからに他ならない。

日本ゴルフ界の、決定的な弱点。それは歴史(ことに世界の)を理解し、熟知した人間が、余りに少ないこと。居たとしても、それは知ったか振り。そのため、縦しんば1962年全米オープンの、映像を素材として渡されても、それは豚に真珠で終わることになる。

数十年も昔の映像は、歴史書を読むに等しいこと。それだけでも新鮮だ。感謝祭の週末。午後3時から全米で放送された、モノクロ映像。どの様な視聴率が出たか。その報告が待ち遠しい。

(Dec,1st.2014)