日本企業の、海外競技への関心と背景

 左から3人目が、男女合わせ最多88勝のキャシー・ウイットワース。5人目がソレンスタム。10人目ほぼ中央が、女子プロゴルフの歴史を、劇的に書き換えたナンシー・ロペス。右端のブラッドリーは、1986年四大タイトルのうちの、三つを獲得した(All photos made by Gabriel Roux)

左から3人目が、男女合わせ最多88勝のキャシー・ウイットワース。5人目がソレンスタム。10人目ほぼ中央が、女子プロゴルフの歴史を、劇的に書き換えたナンシー・ロペス。右端のブラッドリーは、1986年四大タイトルのうちの、三つを獲得した(All photos made by Gabriel Roux)

1972年に産声を上げた時の名称。それはダイナ・ショア招待。カネを出したのはコルゲート。デビッド・フォスターが経営トップだった。狙いは女子のマスターズ。選んだ舞台が、加州の人気避寒地、パームスプリングス。時代の先取り。夢があった。

その後ナビスコが、スポンサーシップを受け継ぐ。そして今回名乗りを上げたのが、日本企業ANA。

英語のHonorの意味は、言うまでもなく名誉。戦いでの戦死から、スポーツ競技での勝利まで。人間には,常にこの言葉が付いて回る。第一回のダイナ・ショア以来、半世紀近い歴史。其処で数多くの勝者が誕生した。

新しい冠スポンサーを迎えた、女子のメジャー第一戦は、ANA inspiration。洒落たネーミングだ。トーナメントの週初め。歴代優勝者22人が集合しての、ディナーが催されている。昔風の表現をすると晩餐会。ここに招待された22人は、まさに(招待される名誉)の持ち主ばかり。

_HRC9528長く取材している私には、懐かしい顔の勢揃い。キャシー・ウイットワース、サンドラ・パーマー、ドナ・カポーニ。さらに数世代若返ってナンシー・ロペスから、アニカ・ソレンスタム迄。まさに女子ゴルフの歴史を、凝縮する華やかさだった。

ANAの投資目的は、タイトルスポンサーだけではない。さらに大きなインパクト。それは米女子プロの、公式エアラインとしての契約だ。これだけの歴史を、日本企業ANAは掌中に収めた。買い物としては、決して高いモノではない。

米のプロスポーツは、ビジネス面で凌ぎを削る。それにフットボール、バスケなど、カレッジの人気スポーツが肉薄する。その過激な競争の中。残念ながらゴルフの女子プロは、ビジネスの規模を、大きく落としている。

RUX_7626捨てる神あれば、拾う神があるモノ。その女子プロゴルフ。いまアジアでしぶとく生き残っている。シーズン初め。そして秋。米女子プロのご一行は、年に二度広い太平洋を往復する。ANAはそれを見越し、オフィシャル航空としての契約を結んだ。昨年11月のことだった。

そして先週。新しい看板でのトーナメントと、それに先立つ晩餐会が行われたもの。関係者の印象は頗る良好。「有り難うANA」の声があちこちで。一方で次のような声が、小さくなかった。

「いまや日本企業は、国内プロゴルフへの関心を失い、その分海外イベントに、カネを出す。宣伝効果として、国内のイベントは、投資するに値しないからです」。

最大の理由。それは社会から,見捨てられ続ける粗末さ。一つの現れが、観客とテレビ視聴率の、二重の落ち込み。それを産んでいるのは、プロの能力だけではない。中に入る代理店の多過ぎる取り分。従って「そんなところへカネを出せるか」と言う反発にも繋がるのだ。

スポーツショーとしての顕示。それを社会に還元させる考え。米女子プロの、今季メジャー第一戦が見せた、冠スポンサーとしての、日本企業の姿勢。それは日本男子プロへの、警鐘そのものだった。

晩餐会に集まった22人の歴代勝者は、全員が歴史の先頭を走ってきた。髪が白くなっても、彼女達が樹立した名誉は、際立っていた。

(April.06.2015)