百年の時間は、あらゆるものを変革する。それは五輪も、ゴルフ場の概念も。
2020年を巡り、揉め続ける五輪はさておき、ゴルフのプレジデンツCupが行われた、韓国のジャック・ニクラスゴルフクラブ。この写真で一目瞭然。ここは古い概念を、見事に歴史の彼方へ追い遣った。
コースは東アジアのハブ空港インチョン国際空港の至近。雄大なフリーウエイの橋も、打球が届きそうな距離を走っている。これと似たコースは、ニューヨークの、湾岸エリアにも既に見られる。
百年前のゴルフは、カントリークラブだった。都市部で一週間働いた富裕層が、週末をゆっくり過ごす。そのためカントリークラブには、豪勢なクラブハウスとゴルフ、乗馬、プールばかりか、英国人の好きな狐狩りの森まで用意されていた。
その伝統は米でも受け継がれた。百十年前1905年の全米オープンは、歴史の町ボストン郊外の、マイオピア・ハントクラブのゴルフ場が舞台だった。ハントクラブとは、言わずもがな狐狩りのことである。
ゴルフを楽しむ大多数は、今でも大きな樹木でセパレートされたコース。其処でのプレーを好むはず。ただしビジネスになると、話が異なる。
特にトーナメントは、客を大勢集める必要がある。その時カントリークラブの概念は、マイナスに作用することになる。最大の要因はギャラリーにとっての足の便。
スポーツショーの欠かせぬ要因。その一つは動員する観客。ドームにしても電車を降りれば、そこは球場のゲート。だから毎試合4万からの観衆を呼び込める。それに比べカントリークラブへ到着する迄には、結構な時間を要する。往復で3時間とか4時間。道路の渋滞も加わる。
プレジデンツCupが開催された、ニクラスゴルフクラブ。この舞台背後に林立する、首都ソウル圏の高層ビル群が、輝いていた。歴史を否定することではないが、ゴルフのビジネスにとって、新しい発想の到来。それを伝えるものだった。
そのニクラス。地球上で三百余を設計し、その数は現在でも、年々増えている。彼は勝手に青写真を描いているわけではない。一つ各々依頼主の要望に、綿密に応える。その姿勢を崩していない。その一つの表現。それが韓国のニクラスゴルフクラブだったのだ。
四月のマスターズ。この一週間、観戦が終わると、広大な芝地の駐車場では、ピクニックが始まる。一年に一度会う、マスターズの友達との、再開を楽しんで。その間に道路の混雑も消える。
一週間で50万を超す、観客を集めるアリゾナのフェニックスオープン。この期間コース内に6、7つの巨大テントが出現。そこでは飲食をしながら、ナマ演奏とダンス、お喋りを、夜十時過ぎまで楽しめる。
日本人は殆ど知らないが、これがカントリークラブ的発想と決別した、ツアー競技ビジネスの、最前線なのだ。
(Oct.19.2015)