今年の全英オープンは、セントアンドルーズのオールドコース。予報通り大型低気圧が直撃。最終日が月曜日に、持ち越される。27年ぶりの事態。そこではアマチュアが、最終組でスタートする。歴史的出来事が重なった。
そのため多くが忘れがち。そんな喧騒の中、週はじめ月曜日のエラーは、私ばかりか、多くが許せない気持ちになった。
ゴルフの殿堂。これがあるのは、米フロリダ州セントオーガスティーン。そんな事で従来は、殿堂入りの式典を、ザ・プレーヤーズ週初めに実施してきた。今年の殿堂入りは4名。マーク・オメーラ、デビッド・グラハム、ローラ・デイビイズ。そのローラの名前には、デイムDame(knightに相当する勲位に叙せられた女性の敬称)が付く。4人目が、私の好きな設計者A.W.ティリングハスト(故人)。
ゴルフ界は、いま規模を大きくすることに、血道を上げている。その一つがイベントを、一ヶ所に集中すること。その一つとして、今年の殿堂入り顕彰を、全英オープンの週の月曜日に設定した。
透かさず、何人もの旧知から「そりゃあ、駄目だよ。肝心のローラが出席できない。時間的に」との、心配意見が多数交わされる。
大西洋には、5時間の時差がある。そればかりか、セントアンドルーズは、欧州北の外れ。加えて全英前週は全米女子オープン。開催場所は、ペンシルベニア州のランカスター。ローラが最終日迄プレーしないはずはないし、予定通りなら殿堂入りの顕彰は翌日午前。5時間の時差を差し引いた時、民間機使用では、それ迄の到着は不可能。
早くから危惧されていたこと。直前の全米女子オープンの週になり、心配の声が、急激に大きくなる。
「チャーター機を、飛ばすべき。それならギリギリでも間に合う」。「何しろ相手はローラ。一時代を築いた英国人。何としてでも、彼女を出席させるべき」。当然のこと。最も強く動いたのが、歳下ながら、先に殿堂入りを果たしているカリ・ウエブ。
然し結果的には、チャーター機も飛ばず。記念写真はこの様に、主役デイムLaura不在の儘、撮影されて終わった。
全英オープン前週のランカスターは、全米女子オープン。主催はR&Aと表裏一体のUSGA。だったら殿堂入りの、セレモニーを一日ずらし、火曜日に行うことだって出来たはず。
R&Aと言うか、ゴルフは形が作られてから約260年。男だけの遊び。ゴルフ場、そしてクラブは(男どもが、女房から逃げ出す場所)だった。私がセントアンドルーズを初めて旅。オールドコースを、初体験したのは1975年5月1日。この時も午後のスタート前。知り合いイアン・ジョイに、連れて行かれた彼らのクラブ。そこでは午前中だと言うのに、全員がラガーやスコッチを楽しんで居た。40年前の日本人には、大きなカルチャーショックだった。
それはさておき、260年前と言えば、日本は江戸中期。世の東西を問わず、男尊女卑が当たり前の時代だった。そのR&Aが、今年から女性にも、クラブを開放した。会員として迎えられたのは、アニカと共にデイムLaura。もう一人いた。レネ・パウエル。70年代の終盤頭角を現した、アフリカ系の女子プロ。「黒がツアー活動など許せない。多数の脅迫状が届いた」時代。
いまはオハイオ州で、ゴルフ教室を展開している。そのレネも、会員に迎えられた女性だった。そんなことでデイムLauraに関しては、二つの意味を持った、今年の全英オープン。それは頗る残念な結果で終わった。
なお日本では、デービースとの表記。本人に言わせるとデイビイズ、だそうである。
(Aug.10th.2015)