初優勝早くも5人目、新鮮な効果に沸く米ツアー

輝く笑顔の初優勝者マルナティ。そればかりか彼が手にしている、ニワトリの優勝杯が、如何にも深南部的。そして胸のロゴマーク。これはMLBのマーク。日本でもプロが、カープやベイスターズのロゴ入りシャツを着れば、野球ファンもゴルフに、関心を持つこと間違いない(PGA TOUR.com提供)

輝く笑顔の初優勝者マルナティ。そればかりか彼が手にしている、ニワトリの優勝杯が、如何にも深南部的。そして胸のロゴマーク。これはMLBのマーク。日本でもプロが、カープやベイスターズのロゴ入りシャツを着れば、野球ファンもゴルフに、関心を持つこと間違いない(PGA TOUR.com提供)

大相撲で初めて番付に載る時は、四股名の文字が小さく、拡大鏡が必要。そのため虫眼鏡の別名がある。

米ツアー15~16年シーズン。これ迄終了した5試合(今週のメキシコは、最終日が月曜に延期)。全員が初優勝。その中でもピーター・マルナティは、今年正月WR 501位。それより前ベガスで優勝した、スマイリー・カウフマンは今年が始まった時、何と1548位だった。まさに虫眼鏡の世界。

優勝は未だだが、パットン・キザイアも、偶然にも1548位タイだった。190センチを超す長身。初優勝を虎視眈々狙っている。若手が次々台頭する。ファンにとっては、堪らない魅力。そんな中注目したのは、Sanderson Farmsだった。大雨で月曜9日に終了した。マルナティが持つニワトリの優勝杯でも分かる通り、大きいとは言え農園が冠企業。それも南部ミシシッピ州の。

まず気に入ったこと。ベガスで勝ったカウフマンが、上海へ行かず、賞金僅か410万ドルを選んだこと。生まれ故郷が隣州アラバマ。大きくなった自分の名前で、深南部でのトーナメントを、盛り上げようとした。23歳称賛に値する。

余談だが11月第一週、日本で行われた米女子ツアー。そこでキム・カウフマンが目立った。早速志摩に連絡。「兄弟かい?」と尋ねた。答えは「残念ながら」だった。とは言えキムは、別の過疎地域サウスダコタの出身だった。いま米では、この様な過疎地からのプロが増えている。

話しはマルナティに戻る。ミズーリ州立大を出て、09年プロ入り。そんなことでMLBロイヤルズの、熱狂的なファン。この写真でも分かるように、最終日彼が着用したウエアは、MLBロゴの入った、ロイヤルズ・ブルーのシャツ。ワールドシリーズ優勝チームの、俄ファンではない。この夏には、レギュラーシーズンのロイヤルズvs.ホワイトソックス戦で、始球式も演じている。

そんな実績を買われ、現在はMLBのブランド大使。素晴らしい活躍だ。

ここで二つ、参考になることがある。深南部ミシシッピやアラバマは、日本のゴルフに置き換えると、島根や鳥取。日本でも「各県で一つ、男子プロ競技を」との意見もある。その場合、賞金は5千万でも3千万でも充分。目的はゴルフの普及なのだから。Sanderson Farmsは、そこで既に成功例を見せてくれた。

もう一つは、他のスポーツとの関係を深めること。それによって相互扶助の付加価値が生じ、ビジネスの規模が拡大。米の場合、増収益金を後継者の育成。そして病と闘う、子供達への支援などに充てている。そもそも米ツアーの、稼ぎ頭はチャリティ基金。入場料を低く設定し、多くの観客を入れれば、大きな社会貢献が可能になることが分かる。

23歳のカウフマン。繰り返すが彼は、高額賞金のWGCを蹴って、半分以下のSanderson Farmsに出場した。この侠気、大衆に訴える力は強い。これほどの舞台裏の面白さ。それにも拘わらず、松山も遼もいないことで、日本のメディアは端から相手にしない。だが興味ある話、さらに参考になる事例は数多あった。日本のゴルフが、それを学ばない。勿体ないことだ。

(Nov.16.2015)