米のキャプテン、ジェイ・ハースには、ゴルフを受け継いだ息子が二人いる。長男がジェイ・ジュニア。今回プレジデンツCup代表に選ばれたビルは次男。
二人とも、父と同じウエイクフォレスト大に進学。同大ゴルフ部は、ジェイの実弟が監督。これ以上は求めようがない、環境に恵まれた。それでも父親と同じ道を、ジェイ・ジュニアは、歩めなかった。
土曜10日夜遅く届いた、シングルス12マッチの組み合わせを、私は長時間検討した。ライダーカップ共々、一週間の勝敗を分ける。それがシングルス12マッチ。私が国際チームで「勝ち」または「有利」としたのは、オストハイゼン、リー、バオデッチ、ラヒリ、デイ、グレイス、そしてベサンムン。
其処で3マッチ、悩んだ。一つは二人の豪州人エース。よもやデイが落とすことはあるまい。他方スコットの相手はファウラー。調子は落としていたが、勢いのある若手。読み違いは他にもあった。松山だ。相手のホームズ。格は松山が上。とは言えデッカイボールで、ガンガン攻めてくるタイプ。初対戦だけに危惧した。
ただし米の記者仲間は「松山の1アップ」が殆どだった。
国際チームのキャプテン、プライス。彼は最終12番目のマッチに、ベサンムンを投入した。唯一人の韓国代表。然もこれを最後に、2年間の兵役義務が待っている。韓国が舞台のプレジデンツCupで、これ以上の設定はない。その悲鳴とさえ言える熱狂に応える。米キャプテンは次男ビルを当ててきた。
この勝負、ベサンムン有利としたのは、私だけではなかった。米の記者たちも「1ダウン」または「2&1」で、ビルの負けを予想した。その結果私の予測では、12マッチ中、国際チームが7つ獲る。これは若しかしたら若しかする。
早速米のGlobal Golf Post 他に連絡を入れる。それを見た米の読者は「ハハーン。デュークはアジア人だから、身贔屓か」と返して来た。
プレジデンツCupの代表は、11人目と12人目が、キャプテンの推薦。其処へ米はミケルソンとビルを選んだ。キャプテン、ハースはその時から、この最も過酷な役回りを、自分の次男に遣らせる。その腹積もりが、出来ていたと推測していい。
獅子の子落とし。まさにその心境だったに違いない。尤も、それに対し、ザック・ジョンソンたち何人かが「僕がアンカーを遣りたい」と願い出ている。キャプテン・ハースはその願望に「与えられた自分の役に、全力を投入してこい」と言って、送り出している。
1927年から、約90年続くライダーカップ同様、この手のチーム戦は「キャプテンのゲーム」と言われる。キャプテンのイメージ通りに、自軍12選手を動かせる、と言うことだ。
先月末の代表12選手発表の場。其処で米12番目に、次男ビルを指名したキャプテン・ハース。ここ迄筋書き通りに決着するとは。賞金なし。国旗を背にした、個人の誇りを賭けた戦い。その重みがあった。
(Oct.12.2015)