一打差の2位に終わったことの無念。そうでなく、第一ラウンド77。その出遅れから、金曜日以降66、66、67で盛り返した、高い技術と集中力。それが全米オープンの舞台だった。南アのルイ・オストハイゼン。
スピースやデイの前に、ツアーMVP争いには加われなかった。だがハリーウッドに置き換えれば、紛れもなく最優秀助演賞ものの活躍。ただし2010年全英オープンで、既に四大タイトルも掌中にしている。押しも押されぬ、世界的な一級プロ。玄人受けするタイプ。
振り返って6月。全米オープン木曜日。オストハイゼンは77を叩いた。偶然とは言えこの時の同組は、タイガーとファウラー。2人は初っ端から80、81と乱れる。プロ同士他人のスコアに影響されることは少ない。とは言えオストハイゼンもスコアを崩した。第一ラウンド68のスピースとは9打差の77。常識的に、この時点で脳裏を過ぎることは二つ。「どの様にして36ホールを通過するか」。もう一つは、早々諦めるか。
果たせるかな、タイガーとファウラーは、最下位近くでカットされた。だがオストハイゼンは違った。金曜日以降の三日間で11アンダーと盛り返す。そして通算4アンダー。優勝したスピースを、一打差にまで追い込んでいた。滅多に見られない猛追。これは今季最高の追い上げだった。
米ツアーを取材していて面白い部分。それは最終日バック9での、手に汗を握る攻防。他のスポーツでも、大詰めでの抜きつ抜かれつ。どんでん返し。これは観る側にとって、堪らない魅力になる。
続く7月の全英オープン。この時は最終ラウンドが、月曜に持ち越されたほどの強風悪天候。その中でオストハイゼンは、3人のプレーオフに残っている。
オストハイゼンが創った熱狂は、未だある。2012年のマスターズ最終日。セカンドが打ち下ろしの2番パー5。4番アイアンの第二打は、253ヤード先のカップに消えた。パー5のホールを2で上がる、ダブルイーグル。マスターズでの、有名なダブルイーグルは、1935年のサラゼン。この時15番で、第二打を放り込み、先行していた、クレイグ・ウッドを逆転して優勝した。いまでも語り草。
そのサラゼンから、オストハイゼン迄、マスターズで記録された、ダブルイーグルは僅か四つ。
それほど希な記録。これが効いてオストハイゼンは、通算10アンダー。首位に並ぶ。だがサドンデス2ホール目でボギーを打ち、ピンク・ドライバーのバッバ・ワトソンの軍門に下った。
それにしても、メジャーの舞台で、これだけの活躍をする高いスキル。その南ア人が次に登場するのは、今週8日開幕のプレジデンツCup。これは米vs.国際チームの戦い。マッチプレーのチーム戦だけに、過去を振り返っても、試合の鍵を握る男が登場する。今季の実績から推し量り、その一番手は紛れもなく、この男になる。
そのオストハイゼン。最近PINGとの、契約を更改している。ベテランのウエストウッドを筆頭に、PINGのプロは、殆ど生涯PINGの用具で押し通す。理由は「よい道具でプレーすれば、結果は付いてくる」(ウエストウッド)。
プレジデンツCupの舞台は韓国。国際チームが勝った場合、MVP候補のナンバーワンは、オストハイゼンだ。
(Oct.05.2015)