マキロイは、全英オープンの前年優勝者。然も舞台は、ゴルフの聖地オールドコース。その彼が月曜サッカーで、左足首靱帯断裂の怪我。その時、多くが「この大事な時に、仲間とサッカーをする。誘惑を断ち切れなかった。まだ子供」とコメント。
その時の発表では「出場のチャンスは10%」。それに対し私は、次のようにコメントした。
「10%は大きい可能性。特に26歳の若者。回復は早いはず。この先10日、医師の指示にしっかり従うこと。幸運を」。
私はマキロイに、好感を抱いている。理由はメジャー4賞のビッグネームが、他の部分では、あっけらかんとして、失敗を繰り返すおおらかさ。一つの例が、招待状まで発送しながら、キャロライン・ウオズ二アッキとの結婚を破棄した、一年前5月の出来事。それにも拘わらず、その週の欧州ツアー旗艦競技BMWPGAで、最終日大逆転優勝を演じた。
勢いは7月以降も止まらず。全英オープン、全米プロを連取。生涯グランドスラムへ、一気に王手を掛けた。失敗にくじけぬ前進。まさに若者の特権だ。
失敗はまたしても訪れた。然しそれに対する対処。これも潔く鮮やかだった。
「残念ながら今年の全英は、欠場します。百%回復し、百%コンペテティブなゴルフが、出来る迄は」。
勿論父親や、マネジメント会社スタッフの、助言は欠かせない。それにしても、ここ迄スパッと決断できる。当たり前なのだが、私は称賛したい。そして思い起こすのが、タイガー26歳の時だ。
その前タイガーは、二千年の全米オープンから、翌年のマスターズ迄、メジャー4連勝した。いわゆるタイガースラム。それは「日の没する時なし」と豪語した、かつての大英帝国を、彷彿させる強さだった。
だが、そこ迄の活躍を続けながらも、タイガーは致命的な弱点を、抱えていた。それが繰り返し、メスを入れざるを得なかった、痛めている左膝だった。
ピークの下降は、意外な速度で襲う。それが注目されたのが、2008年の全米オープン。この時勝つに勝ったが、プレーオフは、左足を引き摺っての18ホールだった。
そして39歳のいま。タイガーは此処までの5ヶ月間で、80台のスコアを三度叩いている。最盛期平均スコアが、69を切ることさえあった男が、いま十数打悪いスコアを打つ。まさに、「無事でなければ、名馬に非ず」を、身をもって証明しているのが、現在のタイガーなのだ。
タイガーの左膝痛は、慢性的なモノ。それに比べマキロイの左足首。それは偶発的なモノ。本人の言う通り、的確な治療と、その後のリハビリをしっかり行う。それで「百%回復と、百%コンペティティブ」状態回復は、十分期待してよいはず。
既に何の関係もないが、同じ週キャロラインは、ウインブルドンで、4回戦敗退している。それもズッと格下に。
人生は常に初舞台の連続。マキロイが怪我から復帰し、優勝した時。熱狂は以前にも増して、大きくなるはずだ。
(June.09.2015)