自閉症の妹を、笑顔で支える、22歳WR一位スピース

WeedenB0903-OSUmarketing 「でも彼らは、誰にも罪はないのですよ。囲りの人が、理解を」。

私たちゴルフ界の人間が、自閉症の三文字を、初めて身近に聞いたのは7年前。2008年3月のことだった。全英、全米オープンなど複数のメジャータイトルを獲得。競技者としては、世界的な大活躍。南アフリカ出身のアーニー・エルス。

38歳のこの時、彼は「自閉症は、語る」と書かれたロゴマークを、ゴルフバッグに付けて、トーナメントに登場している。ツアープロは或る種、イメージが重視されるビジネス。順風満帆だったエルス。この時6歳だったか。長男ベンの自閉症を公表したのだ。勇気が要ったに違いない。

ジョーダン・スピースは、米を代表する州、テキサス生まれの22歳。説明する迄もなく、今年4月、6月マスターズ、全米オープンを連取。「スワ、年間四冠か」と、世界のスポーツ界は騒然となった。尤も快進撃はそこで終わる。それでも全英オープンは、3人のプレーオフに1打差。最後の全米プロ。この時も、豪州のデイを、3打差にまで猛追しての2位だった。4つ全部は勝てなかった。だがそれで、も圧倒的な存在を示した。

そんなスピースに、神は微笑む。それ迄マキロイが92週維持していたWR(世界ランク)。22歳になったばかりのスピース。その頂点に、彼が立ったのだ。

この季節ゴルフは、半分オフ感覚。それに比べMLBは、いよいよ大詰め。そんなタイミングで、全英オープン優勝のザック・ジョンソンは、地元カブスの試合で初の始球式。結構興奮した様子。スピースと妹の写真が、仲間内に出回ったのは、そんな間合いだった。何のためらいもなく。それがこの写真だ。

長男ベンと、コースを歩くエルス(写真はエルス自身のモノ)

長男ベンと、コースを歩くエルス(写真はエルス自身のモノ)

日本のプロゴルフ。それは全体的に「稼いだカネは、オレのモノ」。海外の感覚。それは「稼いだカネは、皆なのモノ」。説明する迄もなく、米ツアーの賞金王はチャリティ基金。最初の積み立てが始まったのは1938年(昭和14年)。その通算が2008年には、1.2billion米ドルに達して居る。

その様な歴史の中、若いスピースも例外ではない。彼の収入を管理するファミリー基金。その一部は北テキサス(スピースが住む場所)プロゴルフ協会が委託され、諸々運用される。その中の一つは、高校生迄を対象にした奨学金制度。2年目の今年も、男女2人が選ばれ受賞している。米の大学教育は学資が高い。それだけに、これらの奨学金システムは、優秀な人材育成に結び付く。

スピースは、ダラスの高校時代から、ゴルファーとして、プロの試合(バイロン・ネルソン選手権)でも活躍。妹の自閉症の話は、その頃から、仲間内では囁かれていた。それが今年の、年間四冠への快走で、瞬く間に表面化した。テキサスを代表する、私たちの記者仲間は、女性のベテラン、メラニー・ハウザー。彼女も微笑んでいた。

妹の自閉症は、もう変に隠す必要も何でも、なくなっていたのだ。

(coutesy of Nicklaus Companies)

(coutesy of Nicklaus Companies)

2008年、エルスが長男の自閉症を公表した、ホンダクラシック。この週は今ニクラスと奥さんバーバラ。2人も参加して、病と闘う子供達と遊び、基金集めを呼び掛けている。奥さんバーバラは、今年米国ゴルフ協会最高の名誉、ボブ・ジョーンズ賞を贈られた。それはゴルフを通し、多大なフィランスロピー活動に対してだった。

形の違う社会奉仕。ミケルソンの住むサンディエゴ。周囲は貧困なヒスパニックが多数。米は間もなく新学期。それを前に、ここ十年近所の子供約千人をマーケットに招待。新学期に必要な、文具、ウエア、靴などを買い与える。その間ミケルソン夫婦は、ズッと会場に留まる。

自閉症から社会の貧困まで。誰にも罪はない。それだけに周囲の人間が、理解を示すことの大切さ。スピースと妹に限らず、多くの例が、教えてくれる。

(Aug.24.2015)