ニクラスの口癖。それは「私の生涯最良の友は、亡き父チャーリーだった」。
こよなく家族を大切にする。その一つの現れが、子供、孫の多さ。いま孫の数は22人に達する。数が多いだけではない、時間がある時には、可能な限り複数の孫と、纏めて遊ぶ。
その22人にとって、大きな楽しみ。それは4月。マスターズ水曜午後の、名物パー3コンテストで、偉大なお爺ちゃんの、キャデイを出来ること。デソト池を一周する、パー3の9ホール。ここに鈴なりの観客が集まり、熱狂する。
主役は勿論、メジャー18勝のお爺ちゃん。とは言えキャデイも、お零れが頂戴できる。ただし孫の数は22人。順番は一度しか、巡ってこない。その様な状況で、孫の一人スティービーが、万馬券を引き当てた。其れがお爺ちゃんのホールインワン。観客からの祝福。報道カメラからの、写真撮影の注文。人生経験の短い、15歳高校生には、めまぐるし過ぎる、水曜午後だった。
スティービーの父親は、ニクラスの次男スティーブ。息子4人の中で、ただ一人ゴルフでなく、フットボールを選んだ。ただしプロのレベルには、到達できなかった。
そのスティーブに代わり、いまフットボールで脚光を浴びているのが、孫の一人ニック・オレアリー。長女ナンの息子は、何と196センチ、244ポンドの巨漢なのだ。フロリダ州立大フットボール部の、看板選手。
フロリダ州立大は、昨年、今年と連続して、全米学生一決定戦に進出。そのうち昨年は、加州パサディナでのローズボウル。この時は巨大な自家用ジェット機Air Bearで、一族郎党がフロリダから、大挙応援に駆け付けている。米大陸は東西約5千キロ。その距離を応援に行く。スケールのデッカイ話。
ニクラスの処は、このところ何しろお目出た続き。まず奥さんバーバラが、ボブ・ジョーンズ賞を贈られた。これはUSGA(米国ゴルフ協会)最高の名誉ある賞。ニクラス自身も受賞しており、夫婦でのダブル受賞は史上初。
追っ掛けるようにして、ニクラスが3月24日。議会金メダルを受け、午後3時から連邦議会でスピーチをしている。その何年も前に、大統領金メダルも受けている。
そして4月8日。マスターズのパー3コンテストで、達成したホールインワン。その時思いも掛けず、巨大な注目を浴びた22人孫の一人、15歳のスティービー。若い彼にとっては、恐らく盆と正月が一緒に来たような、目まぐるしさだったはず。其れでも祖父母(ニクラスとバーバラ)両親の躾の賜物。スティービーは非常に、落ち着いて対応していた。
これがニクラスが言う「生涯最良の友は、亡き父チャーリーだった」から、受け継がれている、帝王一家の伝統なのだ。
誰も彼も、真似のできることではないが、バーバラは5人の子供と、22人の孫をTeam Nicklausと呼ぶ。今回のパー3コンテストでの快挙。これも家族の幸運を、多くの人々に祝福される、モノだった。(April.20.2015)