トーナメント、主役はプロじゃない。奉仕活動なのだ

 22人の孫を持つ、ニクラス夫婦にとって、子供達と遊ぶことは手慣れたモノ。一方で今月24日。連邦議会金メダルを受けた後、ニクラスは議会でスピーチをする。まさに八面六臂の活躍だ( all photos coutesy of Nicklaus Companies)

22人の孫を持つ、ニクラス夫婦にとって、子供達と遊ぶことは手慣れたモノ。一方で今月24日。連邦議会金メダルを受けた後、ニクラスは議会でスピーチをする。まさに八面六臂の活躍だ( all photos coutesy of Nicklaus Companies)

日没で、最終ラウンドの残りが、月曜日に延期された、ホンダクラシック。このトーナメントの主役は、ジャックとバーバラのニクラス夫妻。開催コースPGAナショナルの改造だけではない。週はじめ米ホンダの、山田社長とともに、子供病院を訪問。其処で治療を続ける子供達と交流し、励ます。

子供達にとっては、単なるおじさんとおばさん。とは言え社会への、インパクトは大きい。時あたかも3月24日には、ジャックが連邦議会金メダルを受賞する。この時ジャックは、議会で演説することになる。

時を同じくして、奥さんバーバラは、USGAから、ボブ・ジョーンズ賞を贈られる。これは米ゴルフ界最高の栄誉。彼女の受賞理由。それはゴルフを通した、類い希な社会奉仕活動。

事ほど然様に、ゴルフ界の動きが、一般社会にも反映、そして評価される。コソコソと紫綬褒章を手にした青木功。ドサクサに紛れて、国民栄誉賞を得た長嶋茂雄とは違う。堂々たることなのだ。

NCHCF_HONDA_JM15_092ホンダがスポンサーとして、登場したのは1982年。その年の勝者は、全米オープン三度優勝のへール・アーウイン。さらに遡ると、産声を上げたのが1972年。ジャッキー・グリースン・インベラリークラシックが前身だった。

そしてワイスコフ、トレビノ達、豪華な顔触れが、勝者に名を連ねる。その中でもミラーと共に、ニクラスは二度優勝。勝利を逃しても、最後まで争っての二位を、繰り返した。

ジャッキー・グリースンは、当時ニューヨークで活躍した、売れっ子マルチエンタテーナー。その人脈はプロアマで生かされる。フォード元大統領、ボブ・ホープたち。彼らがグリースンやニクラスと組むことで、会場は水曜日から、大観衆を集めた。

 

 40年前1975年の、ジャッキー・グリースン・インベラりークラシック。左からニクラス、グリースン、フォード大統領、ボブ・ホープ。当時の米社会の顔(coutesy of Nicklaus Companies)

40年前1975年の、ジャッキー・グリースン・インベラりークラシック。左からニクラス、グリースン、フォード大統領、ボブ・ホープ。当時の米社会の顔(coutesy of Nicklaus Companies)

ニクラスにとっては、競技者としての頂点と重なる、トーナメント。七十五歳になった今、彼はボールを打つ代わりに、御輿に乗る役割を、縦横に演じている。一時代を築いても、御輿に乗るためには、変わらぬスター性。さらに大衆に安心感を、与える品位などが求められる。日本ならジャンボ尾崎、村上隆さんたちが適役。青木功など逆立ちしても無理だ。

繰り返し強調されて居ること。それは日本国内、特に男子ツアーの、留まるところを知らない衰退。最大の理由。それは世界との実力差が開き続ける中、彼らの一般社会との繋がりが、継続的に薄くなっていること。そんな連中の賞金レースなど、誰も興味がない。

加えてスポンサー企業と、中継テレビ局が、稚拙な自己PRを、恥ずかしげもなく垂れ流す。だからテレビ桟敷からも、逃げ出されることになる。

それに比べホンダクラシックは、山田社長以下が造った御輿に、ニクラス夫妻が乗り、それによって予算と観客を引っ張り出し、社会貢献に繋げ続ける。

NCHCF_HONDA_JM15_197日本社会にも、昔から寺社仏閣への奉納は、盛んに行われてきた。何らかの被災者には、炊き出しも慣例だ。処が〔私が取材する範囲の〕ツアー競技は、そんな姿が殆ど見えない。

昨年太平洋マスターズ。ギャラリーバスを利用してみた。車内のテレビでトーナメントの宣伝。あろう事か、その中でTBSの林アナウンサーは、太平洋マスターズと、オーガスタのマスターズを、五分の立場で比較していた。見回した処、車内の全客が、テレビからの情報を、無視していた。

七十五歳と言えば、ニクラスはお爺さんである。とは言え十八箇のメジャータイトルを含め、百勝以上のスーパースター。そればかりか、現在でもコース設計のため、大型自家用自家用ジェットAir Bearで、世界を飛び回る、バリバリの現役。

その多忙な中、インベラリークラシック〔現ホンダクラシック)の御輿に載ることで貢献を続ける。それはこれが、自分を育ててくれたトーナメントだからだ。

(March.2nd.2015)