何ともスケールがデッカイ話。ギャンブルでの、負けの累計が55億円。それが与太話でないところが、また素晴らしい。
「宵越しのカネは、持たねえ」。むかし江戸っ子は、啖呵を切った。
数十億円の収入を誇る、大リーガーや、ツアーの看板達。そんな彼らが、もし稼ぎを、チマチマ財テクしていたら、興ざめする。
このオフ招待されて出場した、トルコでのトーナメント。そこで、あの”Bigジョン”デーリーが手にした賞金が、高々8千ドルだった。これもデーリーには、似つかわしくない。勿論デーリーほどの人気者。それ相当のギャラが、当然払われている。
そんな折り、面白い数字が出てきた。デーリーがギャンブルで擦ったカネは、何と55億円に達するというモノ。その殆どはカジノ。これなら如何にも、デーリーらしいスケールだ。何しろこの男、ハチャメチャを絵に描いた人生。それでいて49歳まで残っている。ファンから愛されている証拠。
デーリーとカジノ。この話をする上で、最適なのは、WGCアメリカンエクスプレス。2006年だったはずだ。場所は加州サンフランシスコ。ハーディングパーク。タイガーとデーリーの一騎打ち。これは熱狂した。最後サドンデスのプレーオフを、デーリーはボギーで落とした。1打差の2位。それでも手にした賞金は、一億円近い額。
デーリーの飛行機嫌いは有名。或る種の閉所恐怖症。だから彼は多少の遠距離でも、ドライブを選ぶ。競技終了後、デーリーが向かった先は空港でなく、フリーウエイ80号。その先は隣州ネバダ。そこには不夜城ラスベガスが、デーリー様を待っている。そこでデーリーは、幾つかのテーブルで遊ぶ。それぞれに、デッカイ賭けをしていることだけは確か。
カジノのディーラーには、元ツアープロだった人間も、何人も居る。彼らの助言。それは「賭け事中には飲むな」。理由は2つ。判断が鈍るから勝てない。気持ちが大きくなり過ぎる。その注意、デーリーの耳には届かない。
この夜デーリーは、大負けした。これは米の記者の報告があった。負けの額は、ハーディングパークの4日間で稼いだ、約1億円を軽く越えていた。
デーリーの破れかぶれ人生。これは繰り返されていて、私たち物書きには、実に興味あること。
彼はメジャータイトルを、2つ掌中に収めている。最初は91年全米プロ選手権。この時は、トップでヘッドが背中にくっ付きそうなほどの、オーバースイングで、まず度肝を抜く。妻の出産で急きょ欠場したニック・プライスの代打。更にプライスのキャディをそのまま拝借しての優勝。
処がこれらを上回る、大きなハプニングがあった。優勝直後妻と称する女性と、18番グリーン上で感激のハグ。処が彼女が、10歳以上も上。然も戸籍上他人の女房だった。
これで懲りないのがデーリーの個性。2つ目のメジャーは95年の全英オープン。会場はオールドコース。この18番グリーン上で抱擁した女房は、前回とは違う女性。だがこれらを誰も咎めない。
そして今回出てきた逸話。カジノを中心にギャンブルでの負けが、合計55億円。「いや90億円はある」との説も。それでも花柄模様の、派手派手ズボンで活動を継続。来年には50歳。チャンピオンズツアーの出場も可能になる。
それより何より、この数週後には、ペブルビーチでのAT&Aがある。これはツアープロに加え、セレブが揃うことで、多くの観客を呼ぶ。此処でのデーリーの、アマチュアパートナーは、長いことハリウッドの名脇役ジョー・ペシーだった。
今年のエントリーは、未だ確認していない。だが主催側として「客を呼べるビッグジョン」を、放っておくはずがない。
来年4月。50歳の誕生日を迎えるデーリー。その後60歳、70歳で、彼がどんな行動をし、姿を見せるか。想像するだけで、ワクワクする。タイガーの老後予測は簡単。それに比べデーリーは、全く読み切れないからだ。
その歳になっても、もしかしてビールを水代わりに流し込み、カジノのテーブルで、楽しんで居るかも知れない。
(Jan.19th.2015)